この記事はSpeedcubing Advent Calendar 2020 - Adventar 13日目の記事です。
※本編ではありません。暫く冗談にお付き合いください。
みんな~!ユリノキのすきゅーぶ教室始まるよー☆
下のようなソルブを目指して、頑張っていってねー!
~用語説明~
・Sledge hammer(スレッジハンマー)/Hedge slammer(ヘッジスラマー)
Skewbの基本的な指使い。4手で解けるCLL。
・Sarah Method(セラメソッド)
Skewbで最もスタンダードな初心者用解法。一面完成後からスレッジ/ヘッジのみで揃えるのが特徴。
・CLL(シーエルエル)
完全一面から完成まで揃える134パターンの総称。NS2.0、Sarah上級、KKなど、名前が違うだけで内容が同じ解法が多く存在するため、このブログでは「CLL」と定義する。
~Skewbの揃え方~

みんな~ちゃんと解けましたか?シンプルで良い解法でしたね!
今年はこれで終わりたいと思います!また来年お会いしましょう~
ではでは~~~
テレッテレッテレッテレッテッテテッテッテッテレン、ヒュー!
おふざけにお付き合いいただきありがとうございました・・・
ネタが分からなかった人はチルノの有名な曲を聴いてみてください・・・
ここからが本編になります。かなり真面目な話になりますのでよろしくお願いします。
改めまして、ユリノキです。
今年はSkewbの揃え方が現在までどのように発展していき、そしてこれからどのように発展していくのかを紹介します。
今回は手順・指使い等の小さな単位の話ではなく、解法やLook数を下げる技術といった大きな単位での話となります。
拙い文章な上長文となりますが、最後まで読んでいただけると幸いです。
CLLの普及
僕がSkewbでNRを取る1カ月ほど前に、「NS2.0※」というSkewbの手順表が公開されました。※内容は冒頭のCLLと同じです。
記憶は曖昧ですが、Jaydenがスピソルで投稿したのをTwitterでフォローしていたキュービストが呟いていたのを見て存在を知りました。
当時CLLを習得していたSkewber達が回しやすい手順表を作り公開したおかげで、CLLを習得する人はドッと増えました。CLLを習得すれば勝てた時代がCLLを覚えるのは当たり前の時代へと変わりました。
この頃の僕はCLLを覚え切ったあたりでしたので、すごくラッキーでした。Jayden達の動画を見漁ったり自作したりして手順を覚えていましたので、良手順に感動しながら手順を覚え直しました。そして1カ月後に開催されたCCK2015で初のNRを取ることができました。
CLLの手順は今でも進化し続けています。僕は指使いに癖があるのも理由にありますが、NS2.0の手順はもう3~4割程度しか使用してません。
色んな手順表はありますが、今はSkewb Resourcesという手順表が一番回しやすい手順が載ってますので参考にしてください。その他にもYoutubeやトップSkewberの手順表など探せば色々見つかると思いますので、自分の回しやすい手順を探してみたら良いと思います。
完読みの登場
時は流れ、キューブ界のハード面で大きな革命が起きました。「Magnetic化」キューブの誕生です。Skewbも流行に乗る形でM化Skewbが発売されました。
そして同時にSkewb界隈(僕一人かも知れない)でも衝撃がありました。
そう、Jonatanの…Youtubeデビューです!! ※不具合で動画の埋め込みができませんでした…
Jonatan Kłoskoは当時Skewbの頂点に君臨し続けた偉人で、僕が一番憧れているSkewberです。どうでもいい情報ですが、友人のRamiくんが世界大会2017に行ったときに頼んで書いてもらったJonatanサイン入りSkewbは僕の家宝にしてます…
先ほど貼ったao12の動画を見たとき、最初は動画が公開されていることに喜び、次にその圧倒的な速さに感動し、そして最後にあることに気が付きました。
(Jonatan完読みしてるじゃーーん・・・)
この日から僕の完読み練習が始まりました。
完読みとは、インスペクションで完成まで読み切ることです。海外勢は「1looking」と呼んでいます。当時Skewbの完読みは222に比べて読むパーツ数が多く、非常に難しい技術と思われていました(実際難しいですが…)。そのため完読みを実践レベルで使える人がほとんどいなく、完読みの方法が載っているサイトや動画なんてものは勿論ありませでした。
なので僕は222の完読みを参考に完読みの方法を見つけ、必死に完読みの練習をしました。
完読みの方法は、まず前提としてスキューブの一面を揃えた後の状態を知るためには以下の3項目を最低限確認する必要があります。
一面完成後のコーナーは3種類しかありません。対面するコーナーの向きは片方を確認できれば向きが分かるため、隣接で2つ確認する必要があります。センターはどの場所でも最低3つ確認すれば把握することができます。一面を揃えたときの側面の色ですが、ここでは特に意識しなくても良いでしょう。センターを確認するときに必要になるものですが、ほぼ無意識に見ることになるので大丈夫です。
次に、完読みに必要な作業は以下の3つです。
・コーナーの状態を確認する
・センターの状態を確認する
・コーナーとセンターの位置関係から該当するパターンを把握する
ここまでは完読みができる人の共通認識です。
もし違う方法を使用していたらおそらく無駄な動作が含まれているでしょう。
しかしここからは人によってやり方が違います。コーナーとセンターの状態確認の順番はどちらが先でも問題ありませんので、完読みの順番は人それぞれ違っています。
ちなみにこの順番については2年ほど前にFacebookで投票がありました。
結果はこの通り、票がばらけました。昔の投票なので今どんな結果になるかは不明ですが、多分センターから読み始める人が一番多いと思います。ちなみに僕はコーナー派です。
せっかくですので僕の完読みの方法を紹介したいと思います。投票から察するに一般的ではなさそうですので参考程度に読んで頂ければと思います。
~ユリノキ式完読み方法~
下のスクランブルを、解き方の一面のとおり解いたときを想定して説明したいと思います。
スクランブル:U L' B' R U B' L B' L' R' L' R
解き方 :R' r R r' R':一面
z2 r' R r R' z' r' R r R':CLL
2つのコーナーのうち、1つは動かず、もう1つは左図のように移動しますので、コーナーの状態はPeanut(右図のとおり)になります。
僕は頭で記憶すると忘れちゃうので、確認したらコーナーの状態を指で押さえて忘れないようにしています。
1で確認したコーナー「Peanut」と、2で確認した「X-perm」を図のように組み合わせて、該当するパターンを把握します。
今回は解き方のCLLのとおり、スレッジ2回で解けるパターンが出てきました。
人によって完読みの方法は違うので、自分に合った方法で読むのが良いと思います。
また、スキューブでは5パーツ位置を確認しないといけないため、事前知識無しではとてもインスペクション中に間に合いません。各一面のパターンごとにコーナー・センターの移動場所を暗記しておく必要があります。
このあたりが現在のSkewbです。
アジア大会2018では完読みを実践レベルで習得していたSkewberは3人しかいませんでしたが、世界大会では決勝に残ったメンバーのほとんどが習得していたでしょう。そんな世界大会から約1年半も経ちました。世界では既に「完読みは当たり前」の時代に入り、これから平然と1~2秒を出すSkewberがどんどん増えていくでしょう。
彼らより速くなるためには、1ランク上の技術を身につけなければなりません。良手順の発掘や指使いの見直しなどといった細かな部分ではない、全体のタイムをグッと縮める技術、すなわち解法自体の見直しが必要になってきます。
これからのSkewbの解法
CLLの大きな発展(例えばOLL+PLLから1LLLのような進化)はありませんので、新しい解法を習得するのが現実的です。
Skewbの新しい解法ですが、実はかなり昔からある程度内容は固まっていました。
理由はSkewbが222に非常に似たLBL解法だからです。ぶっちゃけた話、今のSkewbの解法は「CLL縛りをした、パーツ数の多い222」のようなものです。そのため、Skewbが次に進む技術は以下の2つに絞られます。
・Diagonal(不完全な一面を作って揃える解法。222のEG2と考え方は同じ)
※以下Diagと略します。また、ここで取り扱うDiagはCLLと同じ一面から完成までの手順を指します。
メリット :一面の手数が少なくなる。一面のパターンの選択幅が広がる。
デメリット:判断が難しい上、手数は必ず7手以上。
手順には必ず対角の回転記号(rとB、Rとbの組み合わせ)が入るため、CLLに比べて遅い
・TCLL(COを1つ違う状態で一面を作って揃える解法。222のTCLLと考え方は同じ)
メリット :一面の手数がかなり少なくなる。一面のパターンの選択幅がかなり広がる。
デメリット:判断が難しい。パターン数が多すぎる(1080パターン)ため、習得が困難。
EG-1は存在しないのでこの2つになります。
TCLLかDiagのどちらの道に進むかについてですが、海外勢はTCLLに手を出す人がチラチラと現れています。
TCLLのコーナー+対面センター手順表を公開している人や、コーナー18種類のうち上面に2つ揃っているパターンの表を作っている人など、TCLLの研究をしている人が既に存在しています。ちなみにJonatanはかなり昔に「Pseudo FL」と呼ばれる、セットアップCLLをすることでTCLLの一部を回す技術を公開しています(すごい)。
逆にDiagが選ばれない原因ですが、やはり手順の回しにくさが関係していると思います。
特に対角の回転記号を回す指使いがかなり難しいです。手数も多いですし、TCLLの方が覚えたときのメリットは大きいです。
またTCLLも同じですが、公開されている手順表がないのも理由にあるでしょう。
そんな中、僕は最近Diagの道に進みました。
理由は2つありますが、一番の理由はTCLLの手順発掘に疲れたからです…
200パターンほど見つけたあたりで疲れました。あまりにも人生を犠牲にしすぎてしまいましたので、少しずつ手順を発掘していこうと思いました。社会人はツラいよ。
海外勢の誰かが手順表を公開してくれたらありがたいのですが、望みは薄いでしょう。
もう一つの理由ですが、いずれは覚えることになるだろうと思ったからです。
仮にTCLLを覚えた場合、1面の苦手パターンのほとんどを克服することができるでしょう。しかしスクランブル時に不完全一面が完成していた場合、また不完全一面まであと1手の場合、以下のとおりになります。

TCLLを使用したら4手ですが、Diagは当然0手になります。パターン数も136なので、究極を求めるなら習得すべきだと思います。1手までなら見た瞬間にパターンを把握できるので、苦手パターンの場合でもすぐにTCLLに移行することができるでしょう。
そしてもしTCLLを覚えていない場合、7手のDiag手順を回すことになります。不完全一面が1手崩れた状態でも6手はかかります。
Diag中級を覚えて、スクランブル時にDiagの形がきたときに回す方法もありますが、個人的には論外です。それをしたところでover2は避けられないので、Sub2を出すために結局全パターン覚える必要があると思います。
Diag・TCLLの完読みについて
DiagとTCLLの完読みについてですが、大まかな流れはCLLの完読みと変わりません。しかしCLLの完読みと、Diag・TCLLの完読みはそれぞれ異なる部分があります。
まずTCLLはコーナーが異なります。CLLでは3パターンしかありませんでしたが、TCLLのコーナーは18パターンも存在します。もうめちゃくちゃですね。
一応完読みの考え方はある程度は決まっていますが、公開できるほどの完成度ではないので割愛します。
続いてDiagですが、CLLとはセンターの基準が異なります。
CLLの完読みを思い出してみましょう。スキューブの一面を揃えた後の状態を把握するためには3つ条件がありました。
この3つの最後の一行に注目です。CLLでは完全一面を作るため特に意識しなくても色を把握できました。しかしDiagは不完全一面を作ります。
完全一面では側面の色は「1色」でしたが、不完全一面では側面の色が「2色」存在します。1色の場合は側面の色がその1色で決定しますのでほかの3側面も自然と把握できましたが、2色の場合はどちらの色を基準とすれば良いかわからなくなり、正確にセンターを読むことができなくなります。1面が少ない手数の場合、雰囲気でパターンを把握することは可能でしたが、センター全てが移動するような1面パターンの場合はとても混乱し、とてもインスペクション中に判断できません。
まず不完全一面の側面色の法則ですが、「1辺に2色存在する」以外に「左右の辺にあるコーナーの、基準としたい辺側の色は同じである」という法則がありました。上の左図のように矢印動詞を結び付けて、右図のようにイメージすれば、基準色を1つにすることができます。
この方法のデメリットとしては、色が反転してしまうことです。しかし、完読みを続けていくと色での判断はしなくなり、パーツの動きからパターンを導き出すようになるので、Diagのパターンと仮想の配色とを結び付ける練習をすれば解決します。
横向きの色で判断することは慣れるまで大変ですが、練習していくうちに段々とスムーズにできるようになりました。
このあたりの話は222のEG2の完読みができる人に色々とやり方を聞いてみたいなぁと思っています。
あいさつ
ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました。
パーフェクトすきゅーぶ教室、いかがだったでしょうか。この記事を読んで少しでもSkewbに興味を持ってくれる方がいたら嬉しいです。
これからのSkewbは完読み全盛期に入ります。そして海外勢の誰かがDiagかTCLLの手順表を完成させ公開したら時代が変わるでしょう。
僕はDiagの研究はある程度終わったので、来年はTCLLに力を入れていこうと思っています。更なるSkewbの成長に向けて日々精進してまいります!
また、非常に残念なことに、現在日本の公式大会でのマイナー種目の試技数は激減してしまいました。コロナが収まった後も、JRCAの後継となるキューブ団体SCJの方針により試技数が増えることはなさそうです。僕はWCAランキングを世界のSkewberとの戦いの場にしていたので、その戦える回数が減ってしまい本当に残念です。まだ団体が出来上がってから日が浅いので、今後方針が良い方向に変わることを期待しながら見守っていこうと思います。
暗い未来しかなく、今後廃れていくであろうSkewbですが(そもそも元から廃れてた)、Gan Skewbの発売というビックイベントが待っています。久しぶりのハードの更新ですので、性能については期待して良いでしょう。この記事を読んでSkewbを始めようと思われた方はこの機にSkewbを始めてみてはいかがでしょうか。
終わり。
この記事へのコメント
さなえ